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山登りとダイエット
②登山には糖質が必要

《筋肉を動かすために》
筋肉を動かすエネルギー源は「糖」と「脂肪」です。素早く大きな力を発揮する「速筋」は主に糖をエネルギー源とし、小さい力を長時間にわたり発揮する「遅筋」は主に脂肪をエネルギー源として使用します。山登りで使う筋肉は当然ながら遅筋が中心となります。

《無酸素運動と有酸素運動》
速筋は筋肉内に蓄えていた糖質(グリコーゲン)を利用して酸素を使わない「無酸素運動」を行うことで、瞬発的に大きな力を発揮します。そして、運動の副産物として乳酸が作られます。一方、遅筋は血液中の脂肪を取り込んで「有酸素運動」によって力を発揮します。この運動は長時間にわたり持続可能なため、人は何時間も歩き続けることができるのです。

《人体に蓄えられた糖質は意外と少ない》
人間の体内で糖質は肝臓と筋肉内に蓄えられていますが、その量は400〜700gくらいと言われています。仮に500gとすると、そのエネルギーは2000kcalとなります。たくさんあるように見えますが、筋肉が運動に使える糖質はその一部です。

《脳が一番たいせつだから》
人間にとって重要でデリケートな臓器である脳は、エネルギー源として糖しか利用できません。そのため、肝臓内の糖質は脳のために優先的に使われるのです。なので、速筋による無酸素運動は糖質の枯渇と、乳酸などの疲労物質の蓄積により、長時間続けることができないわけです。一方、遅筋の行なう有酸素運動のエネルギー源は血液中の脂肪ですが、体内には膨大な量の脂肪が蓄えられているため、そう簡単に枯渇することはありません。

《脂肪はたくさんあります》
血液中の脂肪(遊離脂肪酸)が足りなくなると、脂肪組織からどんどん供給されます。脂肪1gは9kcalのエネルギーに相当すると言われていますので、脂肪1㎏では

1000(g)×9(kcal)=9000kcal

となります。体重50㎏、体脂肪率20%の人なら、単純計算で

50(㎏)×1000×0.2×9=90000kcal

なんと、9万キロカロリーも蓄えがあることになります。全ての脂肪を使えるわけではありませんので、実際はもっと少ないでしょうが、とにかく膨大なエネルギーが脂肪という形で備蓄されている事がわかります。

《脂肪をたくさん燃焼させたい!》
そこで、「山登りでよりたくさんの脂肪を燃焼させるなら、何も食べない方が効果あるのでは?」
と思われる方もいるかもしれません。しかし、残念ながらそういう訳にはいきません。なぜなら、遅筋であっても筋肉は脂肪だけでは動けないのです。その理由を語ると難しい話になるのですが、大まかには次のような感じです。(見慣れない用語が連続しますので、苦手な方は読み飛ばしてください)

《ちょっと難しい話ですが…》
①筋肉の細胞はATPという物質を燃料にして動く
②糖と脂肪からこのATPを作る過程で、クエン酸回路という化学反応がある
③このクエン酸回路をスタートするためにはオキサロ酢酸という物質が必要
④オキサロ酢酸は糖から作られる
⑤だから、脂肪からATPを作るためには糖が必要である

《要するに》
人間の体は、糖がないと脂肪からエネルギーを引き出すことができないと言われています。そのため、効率よく脂肪を燃焼するために、運動時には適度の糖質が必要なのです。

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②登山には糖質が必要
③登山ダイエットに潜む危険
④登山中の食事のとり方
⑤食料で注意すべき事

 

公開日: 最終更新日:2017/02/06