山の健康トラブル 〜いざという時どう対応するか〜
  Part1 心筋梗塞・狭心症・心不全・脳梗塞 編
山と健康のコンパス


山の中で動けなくなったらどうなるのだろう… 山登りを続けていると誰でもそんな不安を覚えることがあると思います。特に、最近の登山者の大勢を占めるようになってきた中高年の登山者の方ならなおさらですね。中高年登山者が体調を崩して携帯電話で救助要請をするというケースが増えているようです。できるだけそんな事態にならないように、登山中に起こりやすい健康トラブルを知っておきましょう。、Part1では、すぐ命に関わる可能性のある、重大な病気について解説します。
①心筋梗塞・狭心症

 心臓に血液を送る冠動脈が詰まってしまう病気です。流れる血液が足りなくなり胸の痛みが出ると狭心症、それが悪化して心臓の筋肉が壊れてしまうと心筋梗塞です。どちらも突然の強い胸の痛みが起こりますが、狭心症は安静にしていると数秒~数分で治まるのに対し、心筋梗塞は痛みがより強く持続時間も長くなります。痛み方に個人差はありますが、「胸を締め付けられる」「圧迫されるような」痛み方が特徴的です。

【対処方法】
 胸に上記のような痛みを感じたら、無理をせずに安静とします。はじめは狭心症でも、無理に歩行を続けると心筋梗塞へ進行する可能性があります。「強い痛みが持続する」、「安静でも呼吸が苦しい」、「意識が遠くなる」、「症状が落ち着いても歩行を再開するとすぐに痛みが出てくる」、このような場合は行動不能ですのでその場から動かずに救助要請が必要です。

【予防】
 まず日常で上記にのような症状があった場合は、循環器内科を受診して診断を受けておきましょう。多くの場合、以前から動脈硬化により冠動脈が細くなっており、運動などをきっかけに発症します。山の中で特に気をつけなくてはならないのは脱水で、血液が濃縮して血の固まりができると心筋梗塞を起こします。夏山で汗をたくさんかいた時は十分な水分と塩分を摂取しましょう。

【リスク】
・高血圧、糖尿病、脂質異常症
・狭心症の既往
・喫煙


②心不全

 血管に血液を流すポンプである心臓の能力が落ちてしまう状態です。軽度では動いたときの息切れで出現し、重度では安静でも息苦しくなります。発症から時間が経つと足からむくみが出てきます。時に、血圧を保てなくなり意識障害を来します。
 心不全を起こす原因は色々あります。上記の心筋梗塞・狭心症がその代表ですが、そのほかに不整脈や肺の病気、腎臓の病気、重度の貧血、そのほか様々な原因があります。最近、高齢者で心房細動という不整脈が多くなっています。これは、一定の間隔で動くはずの心臓のリズムがバラバラになってしまうもので、脈を取ると間隔が飛んだり、大きい脈や小さい脈が入り交じったりします。普段から不整脈が続く慢性心房細動と、普段は正常だが時々不整脈が出現する発作性心房細動の2タイプがあります。

【対処方法】
 呼吸困難感、顔色が悪い、むくんでいる、血圧が低下している(脈の触れが弱い)などの症状があったら、心不全の可能性がありますのでまず第一は安静です。心不全の状態で無理をするとさらに症状が悪化し、最悪の場合は意識障害から死に至ります。横になると苦しさが増す場合は肺にうっ血していますので、少し頭を高くして休みます。血圧が低下していたり意識状態が悪いときは、逆に少し足を高くして横にします。原因により経過は異なりますが、回復しない場合はその場から動かずに救助要請が必要になるでしょう。

【予防】
 普段から心不全を起こすような病気がないかチェックしておくことが大切です。日常で息切れや動悸、脈の乱れ、立ちくらみ、浮腫(むくみ)などを感じることがあったら、循環器内科を受診して精査を受けておきましょう。


③脳梗塞

 脳に血液を送る血管が詰まって起こります。心筋梗塞と同じように動脈硬化により血管が狭くなっていることが主な原因です。ダメージを受ける脳の部位によって症状は異なりますが、「左右どちらかの手足が動かなくなる、または動きがぎこちなくなる」、「目まいがして歩けない」、「ロレツが回らなくなる」、「朦朧としたり意識を消失したりする」、などが典型的です。

【対処方法】
 足を高く、頭を低くした体勢で横になる。できるだけ早く救助要請をする。症状が一過性で治まる事もありますが(一過性脳虚血発作)、その場合は良く水分を摂り症状を経過を見て救助要請を検討しましょう。
 意識状態が悪い場合(呼びかけに反応しない、つねったりしても反応がない)、いびきをかき始めたり呼吸が不安定な場合などはかなり危険です。食後などの場合は嘔吐するかもしれませんので、できるだけ目を離さないようにしましょう。

【予防】
 動脈硬化のあることがほとんどであり、脱水や血圧低下をきっかけに発症します。汗をかいたら十分に水分を補給しましょう。無理な行動や過剰なアルコール摂取なども影響しますので注意が必要です。

【リスク】
・高血圧、糖尿病、脂質異常症
・脳梗塞、一過性脳虚血発作の既往
・喫煙

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